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心づかい

マルコ・アントニオ・マルティネス神父


 8月15日聖母の被昇天祭のミサの説教で、数日前に東京であった出来事を、皆様にお話しました。もう一度、このシャロームを通して皆様とその出来事を分ち合いたいと思います。


 8月10日、用事があって東京へでかけました。その日は気温35度と、この夏一番の暑い日でした。四ツ谷駅前の交差点で信号待ちをしていました。その時、突然誰かが私の頭の上に日傘を差しかけました。私は自分の目の高さで見回しましたが誰も見えません。右下に目をやると、電動車椅子に乗った50歳位のご婦人が、自分の腕を懸命に伸ばして、その日傘を私の頭上にかざしています。そして私を見上げ、「暑いですね。髪の毛の少ない人は帽子を被ったほうが良いですよ」と言ったのです。


 彼女の腕が疲れてきた様子だったので、私は自分でその傘を支えました。「熱中症にならないように気をつけて下さい。」と再び声を掛けられました。彼女は外国人の私の顔を見ても別に驚く様子もなく、ごく普通に日本人と話しているような口ぶりでした。信号が青になったので、「ありがとうございました」とお礼を言って日傘を返し信号を渡りました。あまりに突然のことだったので、その出来事をゆっくり考えることができませんでした。でもその方の顔を今もはっきりと憶えています。


 彼女がキリスト信者であったかどうか、また、イエスの福音を知っていたかどうかは分りませんが、彼女はその時、イエスさまのことばを実行していました。「人々にしてほしいと、あなたがたの望むことを、人々にもそのとおりにせよ。(ルカによる福音書(口語訳) 6:31)」。


 3月11日の大地震と津波の後、テレビで様々な報道がなされました。例えば、日本人の得意とする親切、思いやり、心づかいを忘れないように。「心は誰にも見えない、けれど心づかいは見える。思いは見えない、けれど思いやりは見える」。このようなことばは誰にとっても意味深いものです。


 しかしキリスト者である私たちには、その上にキリストのことばがあります。人を助けるということは、キリストご自身を助けるということなのです。私たちはそれを信じています。「だれでも、キリストについている者だというので、あなたがたに水一杯でも飲ませてくれるものは、よく言っておくが、決してその報いからもれることはないであろう。(マルコによる福音書(口語訳) 9:41)」


 この世を離れて主の前に立つときに、主イエス・キリストが次のようなことばで迎えてくれたら何よりも幸せです。「すると、王は答えて言うであろう、『あなたがたによく言っておく。わたしの兄弟であるこれらの最も小さい者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。(マタイによる福音書(口語訳) 25:40)」


 最後に、典礼聖歌集にある私の大好きな讃美歌を紹介します。どうかみなさん、この讃美歌のことばを日常生活のなかで実行してください。


 典礼聖歌390番「キリストのように考え」

 ※JASRAC管理楽曲のため、歌詞の掲載はしません。


「シャローム」2011年09月号掲載

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